この作家は初挑戦なのだが、一読した感想は、とても真摯で真面目な作品を書く人だなというものであった。
反面、優等生的で、融通が利かなくて、重いというネガティブな感想も抱いたのであるが。
だが、ここが大切なところだが、そんな彼女の作風が私は決してキライではなかったということ。
とても好感を持つことが出来たのである。
主人公の久平可南子は、東京の全国紙を発行する新聞社に勤める38歳のシングルマザーである。
息子の考太は今小学校2年生で、仙台市から1時間半も離れたところにある可南子の実家で祖父母に育てられている。
可南子は、これまで校閲部で働いていたが、そろそろ考太と一緒に暮らそうと考えていたところに、9年ぶりの外勤への辞令が出たのである。
可南子にとって、外勤のスポーツ部へ異動することには複雑な思いがあった。
これまで誰にも言わなかった考太の父親にまつわる苦い過去がそこにはあったからである。
その当時、写真週刊誌にプロ野球界の八百長疑惑の当事者である選手と深夜2人でいるところを隠し撮りされ、スキャンダルの渦中に巻き込まれたのであった。
妊娠に気付いたのは、その事件に追い回された後のことであり、もう産まざるを得ない状況になっていたのだが、周囲の誰もがその父親が噂の八百長選手だと思い込むのは避けられない状況だったし、可南子も敢えて真実を語るのは避けてこれまで過ごしてきた、考太に対してさえも。
物語は、そんな可南子が、異動後の最初のトライアウト取材で一人の投手に目を引かれることから動き出していく。
父親のことを決して口にしない母親への考太の気遣い、親子が離れて暮らすことの考太への影響、それを押し通す経済的な理由という名の自分のプライド、見栄に対する心の揺れ等々。
女性らしい細やかな視点で、時系列どおりに丹念に物語を描写していく作風が、不思議な清涼感を抱かせ好感を持った。

